足場の種類を徹底解説!現場でわかる特徴と用途、求められる技術の違い

建設現場や家屋の塗装工事などで、建物の周りを囲むように組まれた金属製の構造物、それが「足場」です。多くの人にとっては見慣れた光景かもしれませんが、その形や構造まで意識して見ることは少ないかもしれません。「どれも同じようなものだろう」と感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、実際には足場には多種多様な種類があり、現場の状況や工事の目的に合わせて、最適なものが慎重に選ばれ、組み立てられています。


足場は、ただ職人が作業するために立つ床というだけではありません。それは、現場で働く全ての人の安全を守るための命綱であり、工事全体の効率や品質を大きく左右する、極めて重要な仮設構造物なのです。足場の種類によって、強度や組み立てやすさ、安全性、対応できる建物の形状などが大きく異なります。そのため、足場職人には、それぞれの特性を深く理解し、現場に最適な足場を正確に設置する専門的な知識と技術が求められます。


これから足場の世界を目指す方、あるいは自身の仕事への理解をさらに深めたいと考えている方にとって、その種類の違いを知ることは、プロフェッショナルへの第一歩と言えるでしょう。




これだけは押さえたい、日本の現場を支える3大足場

足場には様々な種類がありますが、日本の建設現場で特に広く使われている代表的なものが3つあります。それぞれの特徴や用途を知ることで、なぜその現場でその足場が選ばれているのかが見えてきます。ここでは、足場選びの基本となる「枠組足場」「くさび式足場」「単管足場」について、詳しく見ていきましょう。



枠組足場(わくぐみあしば)

門型のフレーム部材をメインに構成される、非常に強度が高い足場です。部材が大きく頑丈なため、主に地上45メートル程度までの高層建築物の現場で採用されています。ジャッキ、筋交(すじかい)、鋼製布板(こうせいぬのいた)などを組み合わせて、建物の外周に沿って組み上げていきます。部材一つひとつの強度が高く、揺れにも強いため、作業員は広い作業スペースで安定した作業ができます。一方で、部材が大きく重いため、搬入や組み立てにはクレーンが必要になることもあります。また、曲線的な建物や狭い場所への設置は難しいという側面もあります。主に大規模なビルやマンションの新築、改修工事などでその姿を見ることができます。



くさび式足場(くさびしきあしば)

一定間隔に緊結部(きんけつぶ)を備えた鋼管を支柱とし、そこに手すりや筋交などをハンマーで打ち込んで連結させていく足場です。部材が比較的小さく軽量で、複雑な地形や建物の形状にも柔軟に対応できるのが大きな特徴です。組み立てや解体が比較的スピーディーに行えるため、工期が短い現場で特に力を発揮します。主に中低層の戸建て住宅やアパート、小規模なビルの塗装や解体工事などで広く採用されています。ハンマー一つで組み上げていく際の小気味よい金属音が現場に響くことから、「ビケ足場」という通称でも知られています。



単管足場(たんかんあしば)

「単管」と呼ばれる直径48.6ミリの鉄パイプを、「クランプ」という金具で繋ぎ合わせて組み立てる、最もシンプルな構造の足場です。部材の自由度が非常に高いため、枠組足場やくさび式足場では対応できないような、特に狭い場所や複雑な形状の建物周り、あるいは部分的な補修作業などで活躍します。ただし、他の足場に比べて強度の確保が難しく、主に作業員の通路や材料置き場として使われることが多く、高層の建物全体の足場として使われることはあまりありません。小規模な工事や、他の足場の補助的な役割として用いられる、柔軟性の高い足場です。




業界のスタンダードは進化する。次世代足場のメリットと今後の展望

建設業界では、常に安全性と生産性の向上が大きな課題となっています。その課題を解決するために、従来の足場の良いところを取り入れ、弱点を克服する形で開発されたのが「次世代足場」です。これは特定の製品名ではなく、新しい安全基準や作業効率を満たす足場の総称であり、今後の業界標準となっていく可能性を秘めています。



なぜ「次世代足場」が求められるのか

従来の足場にも多くの利点がありますが、いくつかの課題も抱えていました。例えば、作業スペースの広さや、部材の重量、そして何よりも「手すりの設置タイミング」です。これまでの足場では、作業床を設置した後に手すりを取り付けるため、一時的に手すりがない状態で作業員が高所に上がらなければならない危険な瞬間がありました。また、部材の寸法が日本の一般的な住宅の寸法と合わず、作業効率が落ちる場面もありました。こうした課題を解決し、より安全で働きやすい環境を実現するために、次世代足場は生まれました。



次世代足場がもたらす大きなメリット

次世代足場には、主に3つの大きなメリットがあります。

一つ目は「安全性の飛躍的な向上」です。最大の特徴は「手すり先行工法」が標準となっている点です。これは、下の段から上の段の作業床を設置する前に、必ず先行して手すりを設置できる構造を指します。これにより、作業員は常に手すりがある状態で上の段に上がることができ、墜落事故のリスクを根本から減らすことができます。

二つ目は「作業効率の改善」です。従来の足場よりも作業スペースが広く確保されているものが多く、職人がゆとりを持って作業に集中できます。部材の軽量化や抜け防止機能など、細かな工夫が随所に凝らされており、組み立て・解体の時間短縮にも繋がっています。

三つ目は「保管・運搬効率の良さ」です。部材のサイズが統一され、コンパクトに結束できる設計になっているため、トラックへの積載効率や現場での保管効率が向上し、コスト削減にも貢献します。


このように、次世代足場は、建設業界が抱える安全や人手不足といった課題に対する一つの答えであり、その普及は、より安全で魅力的な職場環境を創り出していく上で重要な役割を担っています。




プロの技が光る「特殊足場」の世界

一般的な建築現場で目にする足場は、実は足場工事全体のほんの一部に過ぎません。世の中には、通常の工法では対応できない特殊な環境や条件下で、プロフェッショナルたちの高度な技術と知識を結集して架けられる「特殊足場」が存在します。これらは、社会のインフラを支え、人々の安全を守る上で欠かせない重要な役割を担っています。



橋や高速道路を支える「吊り足場・張り出し足場」

河川や渓谷に架かる橋、海の上を走る高速道路などの点検や補修工事を想像してみてください。下から足場を組み上げることが不可能な現場では、橋桁(はしげた)など構造物の上部から、チェーンや単管を使って作業床を吊り下げる形で足場を設置します。これが「吊り足場」です。非常に高度な設計計算と精密な施工技術が求められ、わずかなミスも許されない、まさにプロの腕の見せ所と言えるでしょう。同様に、法面(のりめん)や崖などで、構造物から水平に足場を突き出して設置するのが「張り出し足場」です。これらの特殊技術があるからこそ、私たちは日々、安全なインフラを利用することができるのです。



工場の安定稼働を守る「プラント足場」

製鉄所や化学工場といったプラント施設は、複雑に配管が入り組み、高温や高圧の設備が稼働する特殊な環境です。こうした設備のメンテナンスや改修のために組まれるのが「プラント足場」です。限られた狭いスペースに、無数の配管や機器を避けながら、安全な作業スペースを確保しなければなりません。作業計画を緻密に立て、他の作業員と連携を取りながら、パズルを解くように足場を組み上げていく、非常に専門性の高い技術が求められます。プラントの安定稼働、ひいては日本の産業を根底から支える重要な仕事です。



日常の感動を創り出す「イベント設営」

コンサートの巨大なステージ、スポーツイベントの観客席、地域の夏祭りのやぐらなど、私たちの非日常的な体験や感動の舞台裏でも、足場の技術は活躍しています。これらは「仮設構造物」と呼ばれ、短期間で安全な構造物を正確に組み上げるスピードと精度が命です。多くの人が集まる場所だからこそ、絶対的な安全性が求められます。華やかなイベントの裏側で、多くの人々の笑顔と安全を支えているのも、確かな技術力を持った足場職人たちなのです。これらの特殊な現場は、足場技術の応用力と対応力の幅広さを示しています。




なぜ、多彩な足場に対応できる企業は信頼されるのか?

これまで見てきたように、足場と一口に言っても、その種類は現場の数だけ存在すると言っても過言ではありません。基本的な足場から、次世代足場、そして高度な技術を要する特殊足場まで、これらの多種多様なニーズに的確に応えられるかどうかは、その企業の総合的な実力を示す重要な指標となります。



技術力の証明としての「対応力」

枠組足場や単管足場といった基本的な足場を安全に組めることは、プロとして当然のスキルです。しかし、企業の真価が問われるのは、それ以上の領域です。例えば、安全基準がより厳しい次世代足場を標準的に扱えるか、あるいは吊り足場のような特殊な現場での施工実績があるか。こうした多様な足場に対応できるということは、それだけ多くの知識と経験、そして高度な技術を社内に蓄積していることの証明に他なりません。それは一朝一夕で身につくものではなく、長年にわたる地道な努力と挑戦の積み重ねの賜物です。発注者から見れば、この「対応力」の高さは、どんな難しい現場でも安心して任せられるという、絶大な信頼に繋がります。



安全と効率を両立する「提案力」

優れた企業は、ただ言われた通りの足場を組むだけではありません。現場の状況や工事の目的を深く理解し、「こちらの現場なら、従来の足場より次世代足場を使った方が、安全性も効率も上がりますよ」といった、プロの視点からの提案ができます。そのためには、各足場のメリット・デメリットを熟知していることはもちろん、常に新しい技術や工法に関する情報を収集し、自社のものとして採り入れていく積極的な姿勢が不可欠です。こうした提案力は、顧客の課題を解決し、工事全体の成功に貢献するため、企業としての価値をさらに高める要素となります。



職人の成長が企業の成長に繋がる

多様な足場に対応できる環境は、そこで働く職人にとっても大きなメリットがあります。様々な種類の現場を経験することで、自然と技術の引き出しが増え、対応できる仕事の幅が広がっていきます。基本的な足場しか組めない職人と、特殊足場まで手掛けられる職人とでは、その市場価値は大きく異なります。企業が新しい技術の導入や難しい現場への挑戦に積極的であれば、それは社員に成長の機会を提供していることと同義です。職人一人ひとりの成長が、結果として企業全体の技術力を底上げし、さらなる信頼獲得へと繋がっていくのです。


企業の施工事例などを見て、どのような種類の足場を手掛けているかを知ることも、その会社の実力を測る一つの方法と言えるでしょう。

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多様な足場技術こそが、社会の安全と発展の土台を築いている

この記事を通じて、一見すると同じように見える足場が、実は現場の特性や目的に合わせて驚くほど多様な種類を使い分けられていること、そしてその背景には深い知識と高度な技術が存在することをご理解いただけたのではないでしょうか。


基本的な枠組足場から、効率性を追求したくさび式足場、そして安全性と生産性を飛躍的に向上させた次世代足場。さらには、橋梁やプラントといった特殊な環境で社会インフラを支える吊り足場まで。これらの足場一つひとつが、それぞれの現場で働く人々の安全を守り、工事全体の品質を支えるという、極めて重要な役割を担っています。


足場の技術は、決して目立つものではないかもしれません。しかし、その技術なくして、現代社会の快適で安全な暮らしは成り立たないのです。多様な足場技術を習得し、あらゆる現場に最適なソリューションを提供していくこと。それは、建設業界の未来を切り拓き、社会の発展そのものを足元から支える、誇り高い仕事と言えるでしょう。職人たちの確かな技術力が、今日も日本のどこかで、誰かの安全と未来の土台を静かに築いています。


もし、この奥深い足場の世界や、社会を支える仕事のスケールに少しでも心を動かされたなら、一度その扉を叩いてみてはいかがでしょうか。

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