建設業界の中でも「足場屋さんの年収って実際どうなんだろう?」と気になったことはありませんか。体力勝負の仕事というイメージもあり、収入面でもハードなのでは…と想像する人もいるかもしれません。一方で、「実は高収入を狙える仕事らしい」と耳にしたことがある人もいるでしょう。
実際のところ、足場工事を専門とする職人たちの年収は、どのような水準にあるのでしょうか。建設業界の他職種と比べて高いのか低いのか、また年齢や経験によってどれくらいの差が出るのかは、求人票を見ているだけではなかなかつかみにくいものです。特に未経験でこれからこの仕事に就こうと考えている方にとっては、年収の現実がわからないまま不安を抱えてしまうこともあるでしょう。
そこで本記事では、厚生労働省の統計や実際の求人データなどをもとに、足場屋の年収相場を客観的に解説していきます。さらに、収入を左右する条件や、キャリアの積み重ねによる年収の変化などについても詳しく掘り下げます。職人の世界に踏み込む前に、「収入のリアル」を正しく理解することは、安心して働き始めるうえでの第一歩です。
データで見る、足場職人の平均年収とその背景
「足場屋の年収」と一言で言っても、地域や働き方によって幅があるのが実情です。まずは、公的機関の統計や求人情報をもとに、現時点での平均的な給与水準を確認していきましょう。
全国平均は300万〜450万円台がボリュームゾーン
厚生労働省が公表している「賃金構造基本統計調査」や、建設業界の職種別求人データによると、足場工事を専門とする職人の平均年収はおおむね300万〜450万円の範囲に収まっています。未経験者や見習いの場合は年収250万円前後からのスタートとなる一方、経験5年以上の中堅〜ベテラン層では500万円を超えることもあります。もちろん、地域によって単価が異なるため、都市部ではより高い水準になる傾向があります。
雇用形態や所属先の規模で変わる収入格差
年収に大きく影響するのが「どこに雇用されているか」です。たとえば、社員として足場会社に所属している場合と、個人事業主(いわゆる一人親方)として働く場合では、報酬体系や収入の安定性に大きな違いがあります。また、ハウスメーカーや元請けと直取引している中堅以上の会社に所属していると、現場単価が高いため給与も安定しやすい傾向があります。
賃金体系は日給制が主流。月収換算で考えると見えやすい
足場屋の給与体系は「日給月給制」が主流で、地域やスキルによって日給は1万円〜1万8000円前後。20〜25日稼働すれば月収換算で20万〜45万円程度となり、それが年間の収入に直結します。繁忙期には残業や休日出勤が増えるため、一時的に大幅な収入増が見込まれることもありますが、天候などによる工事延期もあるため、月によってばらつきが出やすいのも事実です。
このように、足場屋の年収は一概には語れませんが、構造を理解することで「高い・低い」の判断も明確になります。次の章では、どんな条件が収入に大きく影響するのかを掘り下げていきます。
なぜ人によって年収が違う?収入を左右する5つのポイント
足場屋として働く人の年収には幅があり、それを決める要因は複数あります。ここでは特に影響の大きい5つのポイントに絞って整理します。
地域による単価の差
都市部では工事単価が高く、1日あたりの給与も上がる傾向があります。たとえば、首都圏と地方では同じ作業でも日給に数千円の差がつくことも珍しくありません。
経験年数と役職の影響
3年以上の実務経験があると、現場の中心を任されることが増え、給与アップの機会も増えてきます。職長などのリーダー格に昇格すれば、さらに高い収入が見込めます。
資格の有無と手当
「足場の組立て等作業主任者」などの国家資格は、現場で必要とされるうえに、資格手当の対象にもなります。特に資格者が求められる現場では、収入面でも優遇されやすいです。
所属企業の規模
大手企業やゼネコンと直接取引している会社は、受注単価が高く、それに応じて職人の給与も高水準になりやすい傾向があります。
働き方の違い
社員として安定をとるか、独立して単価を上げるか。一人親方は高収入を狙えますが、保障や仕事の継続性にはリスクも伴います。
こうした要素を踏まえ、次はキャリアや年齢別に変化する年収のイメージを見ていきましょう。
キャリアと年齢で変わる、足場職人の収入モデル
足場職人としての収入は、経験年数や年齢によって徐々に変化していきます。ここでは、キャリア初期から中堅、独立後までの収入の推移を見ていきましょう。
未経験〜3年目:見習い期間の年収イメージ
足場業界に入ったばかりの未経験者は、見習いとして先輩に付いて現場を覚える期間になります。この時期の平均日給はおおむね8,000円〜10,000円前後。月20日稼働と仮定すると、月収は16万〜20万円、年収換算でおおよそ200万〜250万円程度がスタートラインです。ここでは「仕事を覚える」ことが最優先とされるため、収入は控えめになりますが、努力次第で昇給の機会は早い段階から得られます。
3年目〜10年目:中堅職人としての収入安定期
3年以上の現場経験を積むと、1人で足場を組めるスキルが身につき、日給は12,000円〜15,000円に上昇します。さらに「足場の組立て等作業主任者」などの資格を取得すれば、日給16,000円以上も十分可能になります。月給にして25万〜35万円、年収にして350万〜500万円程度まで伸びるのが一般的です。職長として現場をまとめるようになると、さらに手当が加算されることもあります。
独立後・一人親方:実力次第で収入は青天井
10年目以降、経験と信頼を積んだ職人の中には「一人親方」として独立を選ぶ人もいます。この場合、請け単価が上がり、1日2万円以上を稼ぐことも可能です。年収ベースでは600万〜800万円を目指せる反面、案件獲得の営業活動や、保険・道具の自己管理なども自己責任になります。高収入の代わりに安定性やリスクへの備えが必要となるフェーズです。
このように、足場職人としてのキャリアには明確なステップが存在し、それぞれの段階で求められるスキルや姿勢によって年収は変動します。次のセクションでは、収入アップにつながる具体的な資格やスキルについて詳しく解説します。
収入を上げたいなら、資格とスキルが鍵になる
足場職人として年収を上げていくうえで、避けて通れないのが「資格の取得」と「現場対応力の向上」です。ここでは、実際に収入に直結しやすい要素を2つの観点から整理します。
有利になる国家資格:「足場の組立て等作業主任者」とは
もっとも代表的な資格が「足場の組立て等作業主任者」です。これは、労働安全衛生法に基づく厚生労働省所管の国家資格で、一定の実務経験(足場作業経験3年以上)を経て、講習と修了試験に合格することで取得できます。この資格があると、高所作業現場での安全管理者としての役割が任されるようになり、現場単価が高くなる傾向にあります。企業によっては、資格手当(月5,000〜20,000円)を支給する制度もあり、年収を押し上げる要因になります。
作業効率や信頼性を高めるスキル
資格以外にも、「組立てのスピード」「施工精度」「現場の空気を読む力」など、現場で重視されるスキルは多くあります。たとえば、狭小地や複雑な構造物の足場設置では、スムーズな段取り力が高く評価され、リーダー職に昇格するケースもあります。また、元請けや顧客とやり取りする機会が多い現場では、基本的なコミュニケーション力も信頼につながります。
足場業界は「手に職」の世界でありながら、努力と成果が給与に反映されやすい業界でもあります。単に年数を重ねるだけでなく、日々の現場でどう価値を出すかを意識することが、年収アップの近道です。
足場屋としてキャリアを積みたい方、収入をもっと伸ばしたい方は、まずは資格取得や現場経験の積み重ねからスタートしてみませんか。経験が評価につながるこの世界では、一歩踏み出すことで大きく道が開けます。
足場屋の年収を正しく知って、将来を見据えた選択を
足場職人の年収は、地域や経験、資格、勤務先の規模などさまざまな要因によって大きく変動します。一律に「高い」「低い」と判断するのではなく、何が収入を決めているのか、その仕組みを理解することが大切です。
本記事では、未経験者のスタートラインから中堅・独立までの収入モデルや、年収に影響を与える5つの要素、さらに収入アップに有利な資格とスキルについて具体的に紹介しました。特に「足場の組立て等作業主任者」のような国家資格は、手当や役職面でも有利に働き、長く業界で活躍するための武器になります。
また、足場業界は努力や成長が目に見えて評価されやすい環境です。単純作業の繰り返しに見えて、実は非常に奥が深く、キャリアを重ねるごとに収入も働きがいも増していく構造になっています。安定だけでなく、やりがいも感じられる仕事を探している方にとって、有力な選択肢のひとつとなるでしょう。